【相撲用語】行司について徹底解説

行司ぎょうじ

行司ぎょうじ」とは、土俵上で力士の取組をさばき、勝負の判定にあたる人のことです。行司は必ず「木村」か「式守」を名乗ります。定員は45名。

昔は行司のことを「行事」と書き、「相撲」という催しを取り仕切る役割の人のことをいいました。相撲興行の事務や土俵に関する祭祀を司り、相撲場の設営の仕方や儀式次第など、かつては行司の家に代々伝えられていました。相撲の伝統を伝える役割を、行司が担っていたのです。

行司の仕事

行司の仕事

勝負審判

行司は、土俵上で力士の取組をさばき、勝負の判定にあたります。ただし物言いがついた場合、勝敗判定の最終的な権限を持ち、責任を負うのは審判員として土俵下に控える年寄になります。行司は土俵上で力士の取組をさばく、いわば取組の進行役のようなもので、他のスポーツのように審判役を担っているわけではありません。

力士の土俵入りの先導

行司は、呼出を合図に、力士を先導して土俵に上がります。力士全員が土俵に上がり、中央に向き直って所作を行っている間、行司は中央に蹲踞そんきょして軍配の房を振ります。

土俵祭の祭主

土俵祭では、祭主をつとめる神官装束の立行司が脇行司2名を従え、五穀豊穣、国家平安、土俵の無事を祈願します。

番付編成会議の書記

行司は番付編成会議に書記として同席します。しかし、発言はできません。このとき、行司は決められた力士の地位を東横綱から順に、細長い番付原稿に記載していきます。

番付や顔触れなどを書く

行司は、番付や顔触れなどを書きます。(手書きです)

相撲部屋の総務的な仕事など

行司は、その他相撲部屋の総部的な仕事を行っています。

行司の階級(地位・ランキング)

立行司 木村庄之助(最高位)

立行司 式守伊之助(次位)

三役行司

幕内行司

十枚目行司

幕下行司

三段目行司

序二段行司

序ノ口行司

行司の定員は45名です。そのうち、十枚目行司以上の定員数は22名。

行司の階級の昇降は年1回。毎年九月場所後の理事会で、行司の勤務状況を評価し、翌年の行司の階級や待遇が決められます。

行司の最高位、立行司の木村庄之助は結びの一番のみをさばきます。十枚目行司以上は基本的に二番、幕下以下行司はこの限りではないとされています。

しかし各階級の行司の数と力士の数によって、かならずしも自分と同じ地位の力士の取組をさばくとは限りません。下位の行司に休場があった場合、上位の行司が下位の力士をさばいたり、1人の行司がさばく番数が多くなったりする場合もあります。

なお「三役格」「三役格行司」など、「格」をつけるのは通称です。正式な呼び方では「格」はつけません。

行司の給料

行司の給料は本棒と手当からなる月給制です。昇給は年1回。(相撲協会支払い)

・本俸…決まった基準から、能力・成績・勤務状況に応じて理事長が決定
・手当…能力・成績・勤務状況ならびに物価・社会状勢などに応じて理事長が決定。現在の手当は最低でも12万6000円が加えられる。

立行司…推定年収 631万2000円~

本棒:40万円~50万円まで
月給:52万6000円~

三役行司…推定年収 583万2000円~

本棒:36万円~40万円未満
月給:48万6000円~

幕内行司…推定年収 391万2000円~

本棒:20万円~36万円未満
月給:32万6000円~

十枚目行司…推定年収 271万2000円~

本棒:10万円~20万円未満
月給:22万6000円~

幕下行司…推定年収 201万6000円~

本棒:4万2000円~10万円未満
月給:16万8000円~

三段目行司…推定年収 186万~

本棒:2万9000円~4万2000円未満
月給:15万5000円~

序二段行司…推定年収 175万2000円~

本棒:2万円~2万9000円未満
月給:14万6000円~

序ノ口行司以下…推定年収 168万円~

本棒:1万4000円~2万円未満
月給:14万円~

初任給

本棒:1万4000円
月給:12万6000円

※月給はすべて手当込みの金額
※財団法人日本相撲協会寄附行為施行細則第79条より

行司になるには

行司は、相撲協会が採用するので所属は「相撲協会員」となります。行司として採用されると、各相撲部屋に配属されます。

最初の3年間は見習いとして、立行司ならび行司会委員の指導を受け、審判法や行司実務を学びます。そして、その間に序ノ口行司に任用されます。

行司になる条件

・義務教育を修了した満19歳までの男子
・行司に適格と認められる者

行司として採用されるまでの流れ

1. 各相撲部屋に入門
2. 履歴書、保護者の承諾書、住民票、戸籍謄(抄)本、師匠および行司会会長連盟の採用願、行司会会長の添え状をを協会に提出
3. 理事会の承認
4. 相撲協会から行司として採用

行司の装束

行司は土俵上で力士の取組をさばくとき、直垂ひたたれ烏帽子えぼしを着用し、軍配を使用するよう定められています。

また、行司の階級により、軍配の房の色や装束の規定が決められています。そして菊綴きくとじや飾りひもも軍配の房と同じ色を使います。

・菊綴…組みひもをふさにした丸い飾り
・飾りひも…胸元・そで・すそにある

立行司 木村庄之助(最高位)

短刀、印籠、白足袋、上草履
色:総紫

立行司 式守伊之助(次位)

短刀、印籠、白足袋、上草履
色:紫白

三役行司

印籠、白足袋、上草履
色:朱色

幕内行司

白足袋
色:紅白

十枚目行司

白足袋
色:青白

幕下行司

素足
色:青または黒

三段目行司

素足
色:青または黒

序二段行司

素足
色:青または黒

序ノ口行司

素足
色:青または黒

行司装束の歴史

行司は土俵上で力士の取組をさばくとき、直垂と烏帽子を着用し、軍配を使用するよう定められています。

しかし、古く勧進相撲の時代の行司装束は、近世社会で正装とされた麻裃あさがみしも姿で、江戸時代の錦絵などには麻裃姿の行司が描かれています。

現在の直垂と烏帽子の姿は中世武士の衣裳がモデルです。旧両国国技館の開設を機に、散髪した頭は裃に似合わないなどの意見も出て、1910年(明治43年)5月から直垂、烏帽子の姿になりました。

まとめ

まとめ

・行司とは、土俵上で力士の取組をさばき、勝負の判定にあたる人のこと
・行司は必ず「木村」か「式守」を名乗る
・行司の仕事は、「勝負審判」「力士の土俵入りの先導」「土俵祭の祭主」「番付編成会議の書記」「番付や顔触れなどを書く」「相撲部屋の総務的な仕事」など
・行司の階級は、「立行司 木村庄之助→立行司 式守伊之助→三役行司→幕内行司→十枚目行司→幕下行司→三段目行司→序二段行司→序ノ口行司」の順番
・行司の給料は本棒と手当からなる月給制
・行司は、相撲協会が採用するので所属は「相撲協会員」
・行司は土俵上で力士の取組をさばくとき、直垂と烏帽子を着用し、軍配を使用する
・行司の階級により、軍配の房の色や装束の規定がある

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